Restart~あなたが好きだから~
面談室を出たあとは、何事もなかったかのように、自分の仕事に戻った2人だったが、昼休みになり、他の課員たちが全員席を外したのを見計らうと
「まさか秘書とはな。お前みたいな女に秘書なんか務まるのかよ?」
若林が嘲るように声を掛ける。
「知らないわよ、そんなこと。」
普段から不仲であることは、お互いに意識しているが、この状況での若林のニヤニヤ顔が余計に癇に障り、七瀬の口調はいつもにもまして、つっけんどんになる。
「営業部主任から専務秘書なら、栄転と言えなくもないが、自他とも認めるウチの課のエース営業マンが、どう見ても不適の秘書稼業じゃ、まぁ体のいい厄介払いだな、藤堂。」
「・・・。」
「やっぱりパワハラの代償は高くついたということだ。自業自得って奴だよ。」
その言葉に、キッと若林を睨んだ七瀬だったが
「規則だから、一応引き継ぎ書はよろしくな。もっとも俺は、お前を反面教師にして、お前とは正反対の主任になるつもりだから。お前は確かにエ-スだったかもしれないが、でも結局お前だけが目立ってただけで、お前の部下はみんな委縮してくすぶっちまってた。俺はチ-ム全体が成果を上げられるように部下を導く主任になる。まぁ、見ててくれよ。」
そんなことを言って、高笑いを残すと、若林は部屋を出て行く。その後ろ姿を、ギュッと手を握りしめて、見送る七瀬。彼女が自分から異動を望んだとは若林は知らないから、仕方ないのだが、それにしても主任を降りると決めた時点で、ひょっとしたら若林の下風に立つことになるかもとは思っていたが、まさか営業部から外されることは予想していなかった。
それに、あくまでイメ-ジだが、秘書という仕事が自分に向いているとも正直思えない。
(こんなはずじゃなかった・・・。)
七瀬は唇を噛み締めた。
それでも、それから正式発令までの1週間、平静を装いながらも少しずつ、七瀬は営業部第二課を去る準備を始めた。胸の中に去来する思いはあったが、この会社の跡継ぎである専務の肝いりであるこの人事が覆る可能性は、ほぼないのは明らかで、だとすれば、今の彼女に出来ることは、飛ぶ鳥跡を濁さず、新天地に飛び立つ準備を進めることだけだった。
「まさか秘書とはな。お前みたいな女に秘書なんか務まるのかよ?」
若林が嘲るように声を掛ける。
「知らないわよ、そんなこと。」
普段から不仲であることは、お互いに意識しているが、この状況での若林のニヤニヤ顔が余計に癇に障り、七瀬の口調はいつもにもまして、つっけんどんになる。
「営業部主任から専務秘書なら、栄転と言えなくもないが、自他とも認めるウチの課のエース営業マンが、どう見ても不適の秘書稼業じゃ、まぁ体のいい厄介払いだな、藤堂。」
「・・・。」
「やっぱりパワハラの代償は高くついたということだ。自業自得って奴だよ。」
その言葉に、キッと若林を睨んだ七瀬だったが
「規則だから、一応引き継ぎ書はよろしくな。もっとも俺は、お前を反面教師にして、お前とは正反対の主任になるつもりだから。お前は確かにエ-スだったかもしれないが、でも結局お前だけが目立ってただけで、お前の部下はみんな委縮してくすぶっちまってた。俺はチ-ム全体が成果を上げられるように部下を導く主任になる。まぁ、見ててくれよ。」
そんなことを言って、高笑いを残すと、若林は部屋を出て行く。その後ろ姿を、ギュッと手を握りしめて、見送る七瀬。彼女が自分から異動を望んだとは若林は知らないから、仕方ないのだが、それにしても主任を降りると決めた時点で、ひょっとしたら若林の下風に立つことになるかもとは思っていたが、まさか営業部から外されることは予想していなかった。
それに、あくまでイメ-ジだが、秘書という仕事が自分に向いているとも正直思えない。
(こんなはずじゃなかった・・・。)
七瀬は唇を噛み締めた。
それでも、それから正式発令までの1週間、平静を装いながらも少しずつ、七瀬は営業部第二課を去る準備を始めた。胸の中に去来する思いはあったが、この会社の跡継ぎである専務の肝いりであるこの人事が覆る可能性は、ほぼないのは明らかで、だとすれば、今の彼女に出来ることは、飛ぶ鳥跡を濁さず、新天地に飛び立つ準備を進めることだけだった。