Restart~あなたが好きだから~
正式発令の日。定期異動の時期ではないにも関わらず、エース営業マンが別の部署に去って行くという辞令内容は、やはり衝撃を持って、部内で受け止められた。後任の主任が若林というのも、内部昇格なら彼が妥当と思われたが、それでも不安を抱く課員は多かった。
七瀬は確かに、課内で人気がなかったが、その実力については、やはり一目置かれていたし、では若林が課内で信望を集めているかと言えば、それも疑問だった。
複雑微妙な空気が流れる中
「俺が主任になった以上は、とにかく課内の風通しをよくして、みんなが働きやすい環境を作る。それがまず第一の俺の責務だと思う。みんな、なにかあったら、遠慮なく俺に言ってくれ。俺がみんなと課長、係長との間のパイプ役になるから。」
そんなことは全く意に介す様子もなく、若林は得々と抱負を語り、逆に七瀬は
「そういうことで、営業部第二課を離れることになりました。異動までの約2週間で、若林新主任以下のみなさんに、私がお付き合いさせていただいていたお取引の引継ぎをしなければなりません。正直時間があまりありませんので、ハードスケジュ-ルになってしまいますが、ご協力をよろしくお願いします。」
と感情を全く表に出さず、淡々と周囲に告げた。
そして、その2週間は瞬く間に過ぎて、迎えた七瀬の営業部最終出勤日。
その日の勤務終了後、七瀬の送別会が開かれた。課長の乾杯の音頭の後は賑やかな呑み会となったのだが、やがて場は、いい心持ちになって怪気炎を上げる若林の独壇場になって行った。
「おい田中。これからはノビノビと仕事をやれるようにするから、お前の実力をいかんなく発揮してもらうからな。よろしく頼むぞ。」
そんなことを言っている若林のグラスに
「はい、ありがとうございます。」
笑顔で田中がビールを注いでいる。その光景を眺めながら
(今更だけど、もうここに、営業部第二課に私の居場所はないんだな・・・。)
七瀬は改めて実感した。この会の本来の主役であるはずの七瀬の周囲に集う者はほとんどなく、なんとも居心地の悪さを感じざるを得なかった。さりとて早々に中座するわけにもいかないので、上司を始めとして、何人かに挨拶がてら、お酌をして回ったが、概ね冷ややかな反応で
(随分嫌われたものね・・・。)
と内心苦笑いするしかなく、やむなく時間が経つのを待つことにした。
七瀬は確かに、課内で人気がなかったが、その実力については、やはり一目置かれていたし、では若林が課内で信望を集めているかと言えば、それも疑問だった。
複雑微妙な空気が流れる中
「俺が主任になった以上は、とにかく課内の風通しをよくして、みんなが働きやすい環境を作る。それがまず第一の俺の責務だと思う。みんな、なにかあったら、遠慮なく俺に言ってくれ。俺がみんなと課長、係長との間のパイプ役になるから。」
そんなことは全く意に介す様子もなく、若林は得々と抱負を語り、逆に七瀬は
「そういうことで、営業部第二課を離れることになりました。異動までの約2週間で、若林新主任以下のみなさんに、私がお付き合いさせていただいていたお取引の引継ぎをしなければなりません。正直時間があまりありませんので、ハードスケジュ-ルになってしまいますが、ご協力をよろしくお願いします。」
と感情を全く表に出さず、淡々と周囲に告げた。
そして、その2週間は瞬く間に過ぎて、迎えた七瀬の営業部最終出勤日。
その日の勤務終了後、七瀬の送別会が開かれた。課長の乾杯の音頭の後は賑やかな呑み会となったのだが、やがて場は、いい心持ちになって怪気炎を上げる若林の独壇場になって行った。
「おい田中。これからはノビノビと仕事をやれるようにするから、お前の実力をいかんなく発揮してもらうからな。よろしく頼むぞ。」
そんなことを言っている若林のグラスに
「はい、ありがとうございます。」
笑顔で田中がビールを注いでいる。その光景を眺めながら
(今更だけど、もうここに、営業部第二課に私の居場所はないんだな・・・。)
七瀬は改めて実感した。この会の本来の主役であるはずの七瀬の周囲に集う者はほとんどなく、なんとも居心地の悪さを感じざるを得なかった。さりとて早々に中座するわけにもいかないので、上司を始めとして、何人かに挨拶がてら、お酌をして回ったが、概ね冷ややかな反応で
(随分嫌われたものね・・・。)
と内心苦笑いするしかなく、やむなく時間が経つのを待つことにした。