Restart~あなたが好きだから~
迎えたプレゼン当日。アポイントメント30分前に、取引先のビルに到着した田中。
(主任はまだみたいだな。)
別に遅刻をしているわけではないのだが、七瀬に後れを取るのは嫌だったので、とりあえずはホッとする。結局、七瀬が現れたのは約束の時間の5分ほど前だった。
「おはよう。ごめん、遅くなって。」
息を弾ませている七瀬に
「いえ、大丈夫です。」
田中が答えると
「じゃ、行こうか。」
2人はやや急ぎ足で建物の中に入った。
(時間ギリギリなんて、主任にしては珍しいな。)
田中は思っていたが、遅刻ではないので、特に何も言わずに後に続く。
「10時からお約束をいただいている、プライムシステムズの田中です。」
「承っております、本日はご足労いただきましてありがとうございます。それでは7Fの小会議室へお願いいたします。」
「かしこまりました。では、失礼いたします。」
対応してくれた受付嬢は、この企業に出入りしている男性営業マンたちの間では有名な美女だったが、初めて自分が主務として挑むプレゼンを前にした今の田中には、そんな彼女の美貌に心ときめかせている余裕など全くなかった。
エレベ-タ-に乗り込み、7のボタンを押す自分の手が少し震えていることに気付く田中。
(落ち着け。自信をもって臨めば大丈夫って、若林先輩も言ってくれた。それにいざとなれば、きっと藤堂主任だって、助け船を出して下さるはずだ。)
自分に言い聞かせながら、田中がふと横を見ると、七瀬はそんな彼の不安など全く知らぬげに、インジゲ-タ-を見上げている。そして7Fに着き、扉が開くと
「お待ちしておりました。」
相手の担当者が出迎えてくれていた。
「こちらです。」
「ありがとうございます。」
会議室には、相手側の上司も既に待ち構えていた。挨拶を交わし、席に着いた田中は口火を切ろうとしたが、緊張で一瞬、言い淀んだ。気を取り直して、改めて口を開こうとした時
「それでは、弊社からの提案に付きまして、私の方からご説明させていただきます。」
と突然七瀬が、それを遮るように言葉を発した。何が起こったのかわからないという表情で、自分を見る田中には目も向けずに、七瀬は自分の鞄から取り出した提案書を相手側に配布し、最後に彼にそれを渡すと
「始めさせていただきます。」
と言って七瀬のプレゼンはスタ-トした。その声に、ハッと田中は渡された書類に目を落としたが、それは自分の作成したものとは、似ても似つかぬ別物。呆気にとられる彼を全く無視したまま七瀬は話を進めて行った。
(主任はまだみたいだな。)
別に遅刻をしているわけではないのだが、七瀬に後れを取るのは嫌だったので、とりあえずはホッとする。結局、七瀬が現れたのは約束の時間の5分ほど前だった。
「おはよう。ごめん、遅くなって。」
息を弾ませている七瀬に
「いえ、大丈夫です。」
田中が答えると
「じゃ、行こうか。」
2人はやや急ぎ足で建物の中に入った。
(時間ギリギリなんて、主任にしては珍しいな。)
田中は思っていたが、遅刻ではないので、特に何も言わずに後に続く。
「10時からお約束をいただいている、プライムシステムズの田中です。」
「承っております、本日はご足労いただきましてありがとうございます。それでは7Fの小会議室へお願いいたします。」
「かしこまりました。では、失礼いたします。」
対応してくれた受付嬢は、この企業に出入りしている男性営業マンたちの間では有名な美女だったが、初めて自分が主務として挑むプレゼンを前にした今の田中には、そんな彼女の美貌に心ときめかせている余裕など全くなかった。
エレベ-タ-に乗り込み、7のボタンを押す自分の手が少し震えていることに気付く田中。
(落ち着け。自信をもって臨めば大丈夫って、若林先輩も言ってくれた。それにいざとなれば、きっと藤堂主任だって、助け船を出して下さるはずだ。)
自分に言い聞かせながら、田中がふと横を見ると、七瀬はそんな彼の不安など全く知らぬげに、インジゲ-タ-を見上げている。そして7Fに着き、扉が開くと
「お待ちしておりました。」
相手の担当者が出迎えてくれていた。
「こちらです。」
「ありがとうございます。」
会議室には、相手側の上司も既に待ち構えていた。挨拶を交わし、席に着いた田中は口火を切ろうとしたが、緊張で一瞬、言い淀んだ。気を取り直して、改めて口を開こうとした時
「それでは、弊社からの提案に付きまして、私の方からご説明させていただきます。」
と突然七瀬が、それを遮るように言葉を発した。何が起こったのかわからないという表情で、自分を見る田中には目も向けずに、七瀬は自分の鞄から取り出した提案書を相手側に配布し、最後に彼にそれを渡すと
「始めさせていただきます。」
と言って七瀬のプレゼンはスタ-トした。その声に、ハッと田中は渡された書類に目を落としたが、それは自分の作成したものとは、似ても似つかぬ別物。呆気にとられる彼を全く無視したまま七瀬は話を進めて行った。