Restart~あなたが好きだから~
これから、2人は食事をする約束をしていた。


「よかったら、最後にご飯一緒に食べない?」


と城之内の方から誘いがあったのが前日。もちろん断る理由などなく、七瀬は頷いた。ちなみに、秘書課の送別会は、既に先週終わり、専務とは明日、婚約者も交えて、最後の会食をするのだそうだ。


会社の最寄り駅から2つ先の駅に降り立ち、城之内に連れて来られたのは、繫華街からは少し外れた所に、こじんまりと建つフレンチレストランだった。


「会社からそんな遠くない場所に、こんな素敵な雰囲気のレストランがあるなんて、全然知りませんでした。」


「ここは本格的なビストロ料理をリーズナブルな価格で楽しめる、知る人ぞ知るお店なんだ。私の婚約者が、専務に教えてもらって、それで初めてのデートで連れて来てくれたの。」


「そうなんですか。じゃ、思い出の場所じゃないですか。」


「そうなるかな。」


そんなことを話しているうちに、まずはワインが運ばれて来る。


「じゃ、まずは乾杯しようか。お互いのこれから前途を祝して。」


「はい。城之内さん、長い間、お疲れ様でした。あと、ご結婚おめでとうございます。」


「ありがとう。藤堂さん、後のことは、よろしくお願いします。」


そう言い合った2人は笑顔を交わすと、グラスを軽く上げ、そして口に運んだ。


「口当たりがすごくいいですね。」


「うん。私、ここのワイン好きなんだ。でもこれからはこっちに来る機会もあんまりなくなっちゃうからさ。しばしのお別れに、あなたを付き合ってもらったんだ。料理ももちろん美味しいから、期待しててね。」


「はい。」


この後、1週間、職場を共にしたが、業務以外のことを話すことはほとんど出来なかった2人は、あまり肩の凝らない話題で盛り上がったが、やがて、デザ-トと食後のコーヒ-が運ばれて来ると


「最後に少し、固い話をしてもいいかな?」


城之内が容を改め


「はい。」


七瀬も頷いた。
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