Restart~あなたが好きだから~
食事を終え、2人がレストランを出ると


「お疲れ様。」


と声が掛かる。ハッとして七瀬がその方を向くと


「澤崎さん。」


人事部次長の澤崎貴大の姿がそこにあった。なぜ?と疑問を抱いていると


「お迎えありがとう、貴大さん。」


と城之内は笑顔を見せて、彼に近付いて行く。


(えっ・・・?)


その光景を七瀬が呆気にとられながら見ていると


「最後の引継ぎは無事に終わった?」


「うん、お陰様で。」


「なら、よかった。」


仲睦まじい様子を見せるふたりだったが、なんとも言えない表情で立っている七瀬に気が付くと


「ごめんなさい、紹介が遅れて。私のフィアンセの澤崎貴大さん。」


と城之内が言う。


「えっ?城之内さんの婚約者って、澤崎さんだったんですか。存じ上げませんでした・・・。」


驚きを隠せない七瀬に


「先日は藤堂さんにいろいろ失礼なことを言ってしまって・・・。あれも仕事なんで、勘弁して下さい。」


澤崎は頭を下げる。


「そんなことは全然・・・。」


気にしてないと首を振る七瀬に


「お詫びの代わりというわけじゃないけど、駅まで送りますよ。乗って下さい。」


そう言って、澤崎は笑顔を浮かべる。頷いた七瀬が後部座席に、助手席に城之内が収まってから10分程。和やかな雰囲気で話をしているうちに、駅のターミナルに車が滑り込んだ。


「今日は、本当にありがとうございました。」


と一礼した七瀬が車から降り立つと


「藤堂さん。」


城之内が助手席から降りて来て、七瀬を呼び止めた。
< 76 / 213 >

この作品をシェア

pagetop