Restart~あなたが好きだから~
⑪
城之内理子は去り、週明けから七瀬の専務秘書としての日々が、本格的にスタ-トした。
この日、七瀬は定刻1時間前に出社して、専務室に入った。あんまり早く出勤し過ぎるのはよくないという城之内の言葉を忘れたわけではないが、今の自分はとてもそんな優雅なことを言ってられないという思いが、拭えなかったのだ。
専務執務室の清掃から始まって、今日のスケジュ-ルの確認、専務宛てのメールのチェック、そして先週から持ち越してしまった資料作り・・・と慌ただしく業務をこなしているうちに、専務が出勤して来た。
「おはようございます。改めまして、本日からよろしくお願いいたします。」
デスクから立ち上がって、丁寧におじぎをする七瀬だが
「ああ。こちらこそ、よろしく。で、七瀬。」
「えっ?」
先週は「藤堂さん」と呼ばれていたのに、突然名前呼びされて、驚いて氷室の顔を見てしまう。が、専務の方は
「今朝は何時に入った?」
何事もなかったかのように尋ねて来る。
「8時です。」
「早過ぎるな。城之内さんから聞いてないのか?」
「お聞きしてますが、城之内さんと同じ動きをするのは、私にはまだ無理ですから。」
答える七瀬に
「俺の部屋の清掃なんて、業者に任せろ。」
氷室は言う。
「しかし、取締役の執務室には、機密書類があります。業者さんを入れるのは・・・。」
「機密書類をその辺に放置するような真似はせんし、お前だってそうだろ。」
今度はお前呼ばわりだ。先週は「君」呼びで、言葉遣いも優しかったのに、今朝は随分様変わりだ。
「それに、これからはメールチェックは極力自分でやる。出勤途中に十分出来るからな。」
「・・・わかりました。」
なにやら先週とは全く違う成り行き、雰囲気に、七瀬はいよいよ戸惑うが、取り敢えず頷く。
「で、今日のスケジュ-ルは?」
「はい。このあと10時から定例取締役会。昼食を挟んで、午後一は営業本部のミ-ティング。そのあとも・・・。」
「そうか、今日は夕方までは会議三昧だったな。面倒な話だ。」
「・・・。」
「でも最後に一件、取引先の役員と会う約束があったよな?」
「はい。先日契約が成立したお取引先の専務さんがお見えになることになってます。」
「わかった。じゃ、取締役会以外は全て同席しろ。」
「えっ?」
(どれも、秘書が同席するような場じゃないよね・・・。)
戸惑う七瀬だったが
「業務命令だ。いいな。」
「わかりました。」
氷室に決めつけるように言われて、頷くしかなかった。
この日、七瀬は定刻1時間前に出社して、専務室に入った。あんまり早く出勤し過ぎるのはよくないという城之内の言葉を忘れたわけではないが、今の自分はとてもそんな優雅なことを言ってられないという思いが、拭えなかったのだ。
専務執務室の清掃から始まって、今日のスケジュ-ルの確認、専務宛てのメールのチェック、そして先週から持ち越してしまった資料作り・・・と慌ただしく業務をこなしているうちに、専務が出勤して来た。
「おはようございます。改めまして、本日からよろしくお願いいたします。」
デスクから立ち上がって、丁寧におじぎをする七瀬だが
「ああ。こちらこそ、よろしく。で、七瀬。」
「えっ?」
先週は「藤堂さん」と呼ばれていたのに、突然名前呼びされて、驚いて氷室の顔を見てしまう。が、専務の方は
「今朝は何時に入った?」
何事もなかったかのように尋ねて来る。
「8時です。」
「早過ぎるな。城之内さんから聞いてないのか?」
「お聞きしてますが、城之内さんと同じ動きをするのは、私にはまだ無理ですから。」
答える七瀬に
「俺の部屋の清掃なんて、業者に任せろ。」
氷室は言う。
「しかし、取締役の執務室には、機密書類があります。業者さんを入れるのは・・・。」
「機密書類をその辺に放置するような真似はせんし、お前だってそうだろ。」
今度はお前呼ばわりだ。先週は「君」呼びで、言葉遣いも優しかったのに、今朝は随分様変わりだ。
「それに、これからはメールチェックは極力自分でやる。出勤途中に十分出来るからな。」
「・・・わかりました。」
なにやら先週とは全く違う成り行き、雰囲気に、七瀬はいよいよ戸惑うが、取り敢えず頷く。
「で、今日のスケジュ-ルは?」
「はい。このあと10時から定例取締役会。昼食を挟んで、午後一は営業本部のミ-ティング。そのあとも・・・。」
「そうか、今日は夕方までは会議三昧だったな。面倒な話だ。」
「・・・。」
「でも最後に一件、取引先の役員と会う約束があったよな?」
「はい。先日契約が成立したお取引先の専務さんがお見えになることになってます。」
「わかった。じゃ、取締役会以外は全て同席しろ。」
「えっ?」
(どれも、秘書が同席するような場じゃないよね・・・。)
戸惑う七瀬だったが
「業務命令だ。いいな。」
「わかりました。」
氷室に決めつけるように言われて、頷くしかなかった。