Restart~あなたが好きだから~
その後も、小刻みに開催される会議、ミーティングに氷室のお伴をして、顔を出す度に奇異な視線を向けられることになり、七瀬はすっかり気疲れしてしまった。
最後の会議が終わり、部屋を出た七瀬が、腕時計の目をやると、来客との約束時間である17時まであと10分もない。
「専務、急いで戻りませんと。」
焦って七瀬が言うと
「俺の計算より、ちょっと押したな。七瀬、先に戻って出迎えを頼む。」
さすがに氷室も苦い顔になり、指示を出すが
「それは大丈夫です。いざという時に備えて、秘書課長にお迎えをお願いしておきましたので。」
七瀬が答えると
「そうか、さすがだな。頼めるものは、そうやってどんどん人を使えばいいんだ。」
氷室は満足そうに笑うが、七瀬にしてみれば、上長である課長に、そんなに気安くモノを頼めるはずもない。
(もう、人の苦労も知らないで・・・。)
さすがにそんな思いが浮かんで来る。
果たして、専務執務室には、既に来客が通されていた。しかし秘書課長が如才なく対応してくれていたので、何らの問題もなく、会談はスタ-トする。
偶然にも、来客はかつて、七瀬が田中を伴って、商談をまとめた企業「ビーエイト」の専務だった。その商談の帰り道で、大和の婚約者である弥生が他の男と一緒にいる光景を目撃したのを思い出して、複雑な気持ちになる。
一方の来客は、今同席している氷室の秘書が、かつての自社の担当営業マンであることを知ると
「そうですか、あの節はお世話になりました。弊社の担当が、大変優秀な方で、突然異動されてしまって残念だと申しておりましたが、氷室専務に見初められてのご栄転なら、仕方ありませんな。」
笑顔で言って来た。
「とんでもございません。私の方こそ、御社には大変お世話になりまして、本当にありがとうございました。」
それに対して、七瀬もそう言って頭を下げる。こうして会談は和やかな雰囲気で1時間ほどで終了。穏やかな表情で去って行く来客を見送った2人に
「終わりましたか。」
秘書課長が声を掛けて来た。
「はい。課長、先ほどはありがとうございました。」
七瀬が出迎えを変わってもらった礼を述べると
「大丈夫。専務自ら、部下を鍛えて下さってるんだから、そのくらい協力させていただかないと。」
秘書課長はそう言って笑った。
「課長がそう言って下さると助かりますよ。ところで、お言葉に甘えて、藤堂さんをもう少しお借りしてもいいですか?」
「えっ?」
またまた氷室が意外なことを言い出し、七瀬は驚く。
「それは本人が良ければ、全然問題ありませんよ。藤堂さん、今日はこのあと、なにか予定があるの?」
「い、いえ、特には・・・。」
「なら、是非ご一緒なさい。専務は秘書に対して、こんなことはなかなかおっしゃらないのよ。」
そう言って、秘書課長は意味深に笑った。
最後の会議が終わり、部屋を出た七瀬が、腕時計の目をやると、来客との約束時間である17時まであと10分もない。
「専務、急いで戻りませんと。」
焦って七瀬が言うと
「俺の計算より、ちょっと押したな。七瀬、先に戻って出迎えを頼む。」
さすがに氷室も苦い顔になり、指示を出すが
「それは大丈夫です。いざという時に備えて、秘書課長にお迎えをお願いしておきましたので。」
七瀬が答えると
「そうか、さすがだな。頼めるものは、そうやってどんどん人を使えばいいんだ。」
氷室は満足そうに笑うが、七瀬にしてみれば、上長である課長に、そんなに気安くモノを頼めるはずもない。
(もう、人の苦労も知らないで・・・。)
さすがにそんな思いが浮かんで来る。
果たして、専務執務室には、既に来客が通されていた。しかし秘書課長が如才なく対応してくれていたので、何らの問題もなく、会談はスタ-トする。
偶然にも、来客はかつて、七瀬が田中を伴って、商談をまとめた企業「ビーエイト」の専務だった。その商談の帰り道で、大和の婚約者である弥生が他の男と一緒にいる光景を目撃したのを思い出して、複雑な気持ちになる。
一方の来客は、今同席している氷室の秘書が、かつての自社の担当営業マンであることを知ると
「そうですか、あの節はお世話になりました。弊社の担当が、大変優秀な方で、突然異動されてしまって残念だと申しておりましたが、氷室専務に見初められてのご栄転なら、仕方ありませんな。」
笑顔で言って来た。
「とんでもございません。私の方こそ、御社には大変お世話になりまして、本当にありがとうございました。」
それに対して、七瀬もそう言って頭を下げる。こうして会談は和やかな雰囲気で1時間ほどで終了。穏やかな表情で去って行く来客を見送った2人に
「終わりましたか。」
秘書課長が声を掛けて来た。
「はい。課長、先ほどはありがとうございました。」
七瀬が出迎えを変わってもらった礼を述べると
「大丈夫。専務自ら、部下を鍛えて下さってるんだから、そのくらい協力させていただかないと。」
秘書課長はそう言って笑った。
「課長がそう言って下さると助かりますよ。ところで、お言葉に甘えて、藤堂さんをもう少しお借りしてもいいですか?」
「えっ?」
またまた氷室が意外なことを言い出し、七瀬は驚く。
「それは本人が良ければ、全然問題ありませんよ。藤堂さん、今日はこのあと、なにか予定があるの?」
「い、いえ、特には・・・。」
「なら、是非ご一緒なさい。専務は秘書に対して、こんなことはなかなかおっしゃらないのよ。」
そう言って、秘書課長は意味深に笑った。