Restart~あなたが好きだから~
そんな弥生をキッと睨み据えた七瀬は


「あの時。」


と厳しい口調で言い始めた。


「佐倉さんは私にこう言った。『私は藤堂さんのように、自分から彼を手離すような真似は絶対にしない。誰にも大和くんを渡さない。これから私が、彼との時間を紡いでいくの。だから絶対にその邪魔はしないで。』って。覚えてる?私は一言一句、忘れたことがない。あの言葉を聞いて、私はあなたへの敗北を認めるしかなくなった。大和を諦めるしかなかったんだよ!」


「・・・。」


「あの言葉を私に言ったあなたが、今してることは何?確かにあの時、私は大和に最低なことをした。でも、今のあなたがしてることはなんなのよ!」


この七瀬の言葉に、一瞬表情を歪めたように見えた弥生だったが、すぐに薄ら笑いを浮かべると


「そうだったね、そんな青臭いこと言っちゃったね。若気の至りって奴かな。」


と言うと


「私と大和くんが付き合い始めて、ちょっとしてからのことだったよね。そうそう、あの時、私、あなたにお願いされたんだよね?『大和は私のモノなんだから、私の大和を返して』って。」


「・・・。」


「あの時に藤堂さんのお願い、聞いてあげてればよかったね、ごめんなさいね。だいぶお待たせしちゃったけど、大和くんはノシ付けて、あなたにお返しするわ。」


そう言い放った弥生に、顔色を変えて七瀬は


「いい加減にしなよ!」


と叫ぶように言うと、弥生を叩こうとして


「七瀬、ダメ!」


いつの間にか、その場にいた沙耶に後ろから止められた。


「放してよ、沙耶!」


もみ合う2人を見ながら


「なぁ、弥生もいい加減にしろよ。」


さすがに堪りかねたように福地も制止するように言う。が


「じゃあね、藤堂さん。大和くんとお幸せに。」


薄ら笑いを浮かべたまま、そう言うと弥生は2人に背を向ける。それを見て、慌てて一礼した福地は、すぐに彼女の横に寄り添って歩き出す。


「許せない、絶対に許せない・・・。」


目に一杯の涙を浮かべて、去って行く2人の背中を睨み付ける七瀬を後ろから抱きしめながら


「わかった、わかったから。もうほっときな、あんな人たち・・・。」


沙耶は懸命に耳元で言い聞かせていた。
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