Restart~あなたが好きだから~
もう映画の感想会なんて気分では到底なくなり、沙耶と別れた七瀬は、憤懣やるかたない思いを抱えたまま、自宅に戻った。
(あの女、本当に許せない・・・。)
今の七瀬の感情を支配しているのは、ただこの一点だった。収まらない怒りが身体の中に渦巻いていた。だが、さっき弥生にも認めた通り、七瀬はこの事態の当事者でも関係者でもなく、「大和の幼なじみ」に過ぎない。そんな彼女が出来ること、それは先ほど見聞きしたことを大和に報告することだけだ。
偶然にも明日、彼と会うことになっているから、その時に伝えるか、それとも今すぐに電話すべきか。俄かには判断がつきかねていると、テーブルに置いてあるスマホが震え出した。ハッとそちらに目をやると「柊木大和」の名前が飛び込んで来る。あまりのタイミングの良さに戸惑いながら
「はい。」
と電話に出た七瀬の耳に
『今、大丈夫か!』
前置きもなく、興奮したような大和の声が飛び込んで来る。返事をする間もなく
『弥生と会ったんだって?』
続けて聞こえて来た言葉に
「えっ、何で知ってるの?」
思わず聞き返すと
『さっき、弥生から久しぶりにLINEが入って来て、「今日、偶然藤堂さんに会ったから、いろいろ話しておいた。詳しいことは彼女に聞いて。」とだけ書かれてたんだ。びっくりして、すぐに返信したんだけど、既読にもならないし、電話しても全然通じないんだ。いったい、弥生から何を聞いたんだ?教えてくれ!』
興奮を抑えきれない大和の声が。
(佐倉さんは、あくまで自分では大和に何も言う気がないんだ・・・。)
そのことに改めて怒りを覚えるが、と言って、さっき知った真実を伝えれば、大和がどんなに悲しみ、傷付くかは想像に難くない。だが、伝えないわけにはいかなかった。覚悟を決めて、話し始めた七瀬の言葉を聞いている大和が、息を呑んでいるのが、スマホ越しにはっきりわかる。彼の感情の高ぶりが収まり、悲しみと絶望に沈んで行くのが伝わって来る。
それが辛かったが、七瀬は話し続けるしかなかった。全てを語り終わった時、自分の目にいつの間にか涙がにじんでいることに気が付いた七瀬は
「大和。」
ひと言も発しないままの幼なじみに、たまらなくなって呼び掛けていた。
(あの女、本当に許せない・・・。)
今の七瀬の感情を支配しているのは、ただこの一点だった。収まらない怒りが身体の中に渦巻いていた。だが、さっき弥生にも認めた通り、七瀬はこの事態の当事者でも関係者でもなく、「大和の幼なじみ」に過ぎない。そんな彼女が出来ること、それは先ほど見聞きしたことを大和に報告することだけだ。
偶然にも明日、彼と会うことになっているから、その時に伝えるか、それとも今すぐに電話すべきか。俄かには判断がつきかねていると、テーブルに置いてあるスマホが震え出した。ハッとそちらに目をやると「柊木大和」の名前が飛び込んで来る。あまりのタイミングの良さに戸惑いながら
「はい。」
と電話に出た七瀬の耳に
『今、大丈夫か!』
前置きもなく、興奮したような大和の声が飛び込んで来る。返事をする間もなく
『弥生と会ったんだって?』
続けて聞こえて来た言葉に
「えっ、何で知ってるの?」
思わず聞き返すと
『さっき、弥生から久しぶりにLINEが入って来て、「今日、偶然藤堂さんに会ったから、いろいろ話しておいた。詳しいことは彼女に聞いて。」とだけ書かれてたんだ。びっくりして、すぐに返信したんだけど、既読にもならないし、電話しても全然通じないんだ。いったい、弥生から何を聞いたんだ?教えてくれ!』
興奮を抑えきれない大和の声が。
(佐倉さんは、あくまで自分では大和に何も言う気がないんだ・・・。)
そのことに改めて怒りを覚えるが、と言って、さっき知った真実を伝えれば、大和がどんなに悲しみ、傷付くかは想像に難くない。だが、伝えないわけにはいかなかった。覚悟を決めて、話し始めた七瀬の言葉を聞いている大和が、息を呑んでいるのが、スマホ越しにはっきりわかる。彼の感情の高ぶりが収まり、悲しみと絶望に沈んで行くのが伝わって来る。
それが辛かったが、七瀬は話し続けるしかなかった。全てを語り終わった時、自分の目にいつの間にか涙がにじんでいることに気が付いた七瀬は
「大和。」
ひと言も発しないままの幼なじみに、たまらなくなって呼び掛けていた。