Restart~あなたが好きだから~
実際の総会のリハーサルが始まった。当日の司会進行を務める氷室圭介代表取締役社長の開会宣言からスタ-トする、まさに本番さながらの進行であった。
特に証券代行機関や従業員が株主役となり、想定問答集を使っての質疑応答は入念に行われ、回答が分かりづらい箇所には修正が入り、また顧問弁護士が議事進行に法令違反がないかをチェックしている。
(こんな張り詰めた空気でやってるんだ・・・。)
自分たちのリハを終えた七瀬は、会場に入って見学していたが、事前リハとは思えない迫力に驚いていると
「まぁウチは業績も悪くないし、当日もそんなに揉める要素はないとは思うが、なんといっても、今回は議案事項に人事案件があるからな。」
「専務が矢面に立たされる可能性はあるな。ただでさえ、議案説明に立つのは初めてだし、事実上の世襲表明になる専務の副社長昇格に反感を持つ株主もいるからな。」
などとヒソヒソ話す総務部員たちの声が耳に入って来る。
(専務・・・。)
そんな話が耳に入って来て、七瀬は氷室の顔を思わず見つめてしまうが、当の専務は落ち着いた表情で、リハを続けている。
『リハで緊張してて、どうするんだよ。』
氷室のそんな声が聞こえて来そうだった。結局半日に渡って、本番さながらに行われたリハ-サルは大きな問題も生じず、滞りなく終了した。
「お疲れ様でした。」
他の取締役と談笑しながら、会場から出て来た氷室を、七瀬は入口で出迎えた。
「おう、七瀬もお疲れ。」
リハが無事に終わって、ホッとした表情の氷室を七瀬をねぎらうと
「今日はこのまま直帰でいいだろう、飯でも食って行くか?」
誘って来るから、七瀬は思わず周囲を見てしまう。果たして
「お、専務。公開デート申し込みですか?」
隣の取締役に揶揄われ
「ええ。もっともこの秘書は、恋愛に興味がないそうなんで、単純に打ち合わせを兼ねてのことです。」
氷室は平然と答える。
「なるほど。でもまぁ専務は藤堂さんと齢も近いから、まだ恰好がつくからいい。私らなんて、うっかり女性秘書にそんなことを口にしたら、すぐにセクハラ親父扱いですよ。世知辛い世の中になったものです。じゃ、失礼します。」
そんなことを言って、苦笑いを浮かべると、取締役は一礼して去って行った。そして実際、このあとの会食中の2人の会話は、若干の雑談は入ったが、あとはほぼ仕事のことばかりだった。
特に証券代行機関や従業員が株主役となり、想定問答集を使っての質疑応答は入念に行われ、回答が分かりづらい箇所には修正が入り、また顧問弁護士が議事進行に法令違反がないかをチェックしている。
(こんな張り詰めた空気でやってるんだ・・・。)
自分たちのリハを終えた七瀬は、会場に入って見学していたが、事前リハとは思えない迫力に驚いていると
「まぁウチは業績も悪くないし、当日もそんなに揉める要素はないとは思うが、なんといっても、今回は議案事項に人事案件があるからな。」
「専務が矢面に立たされる可能性はあるな。ただでさえ、議案説明に立つのは初めてだし、事実上の世襲表明になる専務の副社長昇格に反感を持つ株主もいるからな。」
などとヒソヒソ話す総務部員たちの声が耳に入って来る。
(専務・・・。)
そんな話が耳に入って来て、七瀬は氷室の顔を思わず見つめてしまうが、当の専務は落ち着いた表情で、リハを続けている。
『リハで緊張してて、どうするんだよ。』
氷室のそんな声が聞こえて来そうだった。結局半日に渡って、本番さながらに行われたリハ-サルは大きな問題も生じず、滞りなく終了した。
「お疲れ様でした。」
他の取締役と談笑しながら、会場から出て来た氷室を、七瀬は入口で出迎えた。
「おう、七瀬もお疲れ。」
リハが無事に終わって、ホッとした表情の氷室を七瀬をねぎらうと
「今日はこのまま直帰でいいだろう、飯でも食って行くか?」
誘って来るから、七瀬は思わず周囲を見てしまう。果たして
「お、専務。公開デート申し込みですか?」
隣の取締役に揶揄われ
「ええ。もっともこの秘書は、恋愛に興味がないそうなんで、単純に打ち合わせを兼ねてのことです。」
氷室は平然と答える。
「なるほど。でもまぁ専務は藤堂さんと齢も近いから、まだ恰好がつくからいい。私らなんて、うっかり女性秘書にそんなことを口にしたら、すぐにセクハラ親父扱いですよ。世知辛い世の中になったものです。じゃ、失礼します。」
そんなことを言って、苦笑いを浮かべると、取締役は一礼して去って行った。そして実際、このあとの会食中の2人の会話は、若干の雑談は入ったが、あとはほぼ仕事のことばかりだった。