愛を嗅ぐ💖
困った診断結果
困った診断結果
「…うむ、概ねあなたの症状は把握しました。今、あなたに記入してもらった問診票は心理検視の側面もあって、その結果からR子さん、あなたが抱えている心の悩みは文字通り、あなた自身の自らに向きあう気持ちの問題で、特に精神的な病いには該当しませんよ」
”やっぱりだ…”
W氏のこの言葉を耳にした瞬間、R子は心の中でそう呟くと、わずかながらガクッと肩を落とした。
だが、W氏は”それ”を見逃さなかった…。
***
「R子さん…、あなたはこれまで複数の専門医で受診されて、さぞ長々とした”病名らしきもの”を、突きつけられたと思う。それで施されたのは、精神を安定させるとかの気休め薬と聞き流す程度のカウンセリングだったんじゃないですか?まあ、中には催眠療法を用いた医師もおったでしょうが、そんなもん、あなたが抱える悩みの解決法になどなり得ない」
これは、R子にとってまさに図星であった。
そこで彼女のネクストは極めて明瞭極まる。
”なら、Wセンセー、あなたは何をしてくれるって言うの?”
…で、あったが、ここでも彼女の心の訴えを、即W氏は明確にキャッチしていた…。
***
「うむ…、そこで私の対症法ですが…。要はシュミレーションを作って、具体的にあなたがリアルなやり取りをする。そこでの局面局面で、心の持ちようを強制矯正するという施術を試みます。まあ、言ってみれば逆療法の荒療治になる。そのかわり、他の医師のように症例所持者に解決方法を押しつけることはしない。あくまであなたは私の導きに沿って対処して行けばいい」
ここでR子の目つきが変わった。
「先生!それでお願いします!」
彼女はW氏の正面で、前のめりになって、そう宣言した。
***
「まあまあ…、気持ちはわかりますが、そうはしょらないで、R子さん…(苦笑)。あなたの問診回答を見ると、今回用意するシュミレーションはもう明らかです。…あなたが周囲のハッピーをぶち壊そうとする根本心理、それは性的欲求の不充足感です!」
「!!!」
「あなたが妬むのは、要はもっぱら同性女性の恋や結婚です。あなたが問診で答えたところでは、今まで付きあった男性5人とのセックスで一度もエクスタシーに達した経験がない。男性とはいずれも数回の性交渉のあと、別れている。これは何を意味します?」
「いえ、私はあのう…」
「あなたはすべて相手の不十分さを突いて、自分はさしたる努力もせず、なんて男運が悪いんだと嘆き、身近の女性が結婚とかとなれば、その女性がどんな苦労と努力を重ねてささやかな幸せを手に入れたかなど、そっちのけで、単純に隣の芝生の青さばかりに目が行き、他人の幸せを妬む。この身勝手極まりない思考サイクルが、あなたのビョーキとやらの根本要因なんです」
「先生…」
R子はけちょんけちょんにやられ、しょぼんとしてしまった…。
***
「いいですか、人への妬みや嫉みは人間なら誰しも心に抱く感情です。でも、我々は人間なんです。さっき言った通り、人が愛する人と結ばれるには、皆、多くの困難を乗り越えてきてますよ、大体は。それなら結婚式とかでそんな他人の幸せに接する機会があれば、自分も負けずに努力して、その上で自分も素敵な相手を見つけ、一生懸命二人で努力し合って、きっとこの人より幸せになってやろうと‥。だから、今日はとにかくおめでとう。お幸せに。私も頑張って後に続きま~すって。そんな前向きな姿勢、ほとんどの人間には当たり前でしょう」
「…」
もう、R子には返す言葉など見当たらなかった。
「…それが、あなたには全くもって、できていない。人をやたらと妬み、あろうことかその幸せを壊してしまいたいなどという人間の最も卑しい醜い心のまま、あなたは何十年も生きてきた。恥ずかしくないんですか?」
「…」
もう、R子は唇をかんで、両目からは涙があふれ落ちていた。
”なんて自分はさもしく卑しい人間なんだ!”
彼女はここに至り、素直に自分へそう突きつけることができた。
そしてR子は、なぜこんな当たり前のことを、今までの心理診療士は言ってくれなかったのかと…、そんな単純に疑問が湧いていた。
「…うむ、概ねあなたの症状は把握しました。今、あなたに記入してもらった問診票は心理検視の側面もあって、その結果からR子さん、あなたが抱えている心の悩みは文字通り、あなた自身の自らに向きあう気持ちの問題で、特に精神的な病いには該当しませんよ」
”やっぱりだ…”
W氏のこの言葉を耳にした瞬間、R子は心の中でそう呟くと、わずかながらガクッと肩を落とした。
だが、W氏は”それ”を見逃さなかった…。
***
「R子さん…、あなたはこれまで複数の専門医で受診されて、さぞ長々とした”病名らしきもの”を、突きつけられたと思う。それで施されたのは、精神を安定させるとかの気休め薬と聞き流す程度のカウンセリングだったんじゃないですか?まあ、中には催眠療法を用いた医師もおったでしょうが、そんなもん、あなたが抱える悩みの解決法になどなり得ない」
これは、R子にとってまさに図星であった。
そこで彼女のネクストは極めて明瞭極まる。
”なら、Wセンセー、あなたは何をしてくれるって言うの?”
…で、あったが、ここでも彼女の心の訴えを、即W氏は明確にキャッチしていた…。
***
「うむ…、そこで私の対症法ですが…。要はシュミレーションを作って、具体的にあなたがリアルなやり取りをする。そこでの局面局面で、心の持ちようを強制矯正するという施術を試みます。まあ、言ってみれば逆療法の荒療治になる。そのかわり、他の医師のように症例所持者に解決方法を押しつけることはしない。あくまであなたは私の導きに沿って対処して行けばいい」
ここでR子の目つきが変わった。
「先生!それでお願いします!」
彼女はW氏の正面で、前のめりになって、そう宣言した。
***
「まあまあ…、気持ちはわかりますが、そうはしょらないで、R子さん…(苦笑)。あなたの問診回答を見ると、今回用意するシュミレーションはもう明らかです。…あなたが周囲のハッピーをぶち壊そうとする根本心理、それは性的欲求の不充足感です!」
「!!!」
「あなたが妬むのは、要はもっぱら同性女性の恋や結婚です。あなたが問診で答えたところでは、今まで付きあった男性5人とのセックスで一度もエクスタシーに達した経験がない。男性とはいずれも数回の性交渉のあと、別れている。これは何を意味します?」
「いえ、私はあのう…」
「あなたはすべて相手の不十分さを突いて、自分はさしたる努力もせず、なんて男運が悪いんだと嘆き、身近の女性が結婚とかとなれば、その女性がどんな苦労と努力を重ねてささやかな幸せを手に入れたかなど、そっちのけで、単純に隣の芝生の青さばかりに目が行き、他人の幸せを妬む。この身勝手極まりない思考サイクルが、あなたのビョーキとやらの根本要因なんです」
「先生…」
R子はけちょんけちょんにやられ、しょぼんとしてしまった…。
***
「いいですか、人への妬みや嫉みは人間なら誰しも心に抱く感情です。でも、我々は人間なんです。さっき言った通り、人が愛する人と結ばれるには、皆、多くの困難を乗り越えてきてますよ、大体は。それなら結婚式とかでそんな他人の幸せに接する機会があれば、自分も負けずに努力して、その上で自分も素敵な相手を見つけ、一生懸命二人で努力し合って、きっとこの人より幸せになってやろうと‥。だから、今日はとにかくおめでとう。お幸せに。私も頑張って後に続きま~すって。そんな前向きな姿勢、ほとんどの人間には当たり前でしょう」
「…」
もう、R子には返す言葉など見当たらなかった。
「…それが、あなたには全くもって、できていない。人をやたらと妬み、あろうことかその幸せを壊してしまいたいなどという人間の最も卑しい醜い心のまま、あなたは何十年も生きてきた。恥ずかしくないんですか?」
「…」
もう、R子は唇をかんで、両目からは涙があふれ落ちていた。
”なんて自分はさもしく卑しい人間なんだ!”
彼女はここに至り、素直に自分へそう突きつけることができた。
そしてR子は、なぜこんな当たり前のことを、今までの心理診療士は言ってくれなかったのかと…、そんな単純に疑問が湧いていた。