好きだなんてずっと言えるわけがなかった。
「はあ〜……」

「まだ気にしてるのー?」




大きなため息をつく私の横で舞が呆れた顔をして話しかけてくる。

生徒会選挙はまあ当然というか、必然というか清水君に敗北し、彼は見事生徒会副会長の座を手に入れたのだった。

私はお情けで会計に。
どうせやるなら勝ちたかった気持ちが少しはあったけれど……。

あんな完璧な人に勝てるわけなかったよね。




「もう、生徒会には入れたんだからいいでしょ?」

「……でも負けた」

「はいはいもう気にしない! ていうか、怜〜絵の描き方教えて……」




もう季節は冬になろうとしているのに、舞は全く絵が上達していなかった。
いい言い方をすれば、……独創的。

悪い言い方をすれば……何を描いているかわからない。




私は苦笑して、舞と一緒にひとつのキャンバスに向かった。




「失礼します」

「っ!?」



そんな時美術室の教室がガラッと開けられた。
そこに立っていたのは清水君。




「あ、凛だ」

「え、凛?」

「うん。みんなそう呼んでるよ」



舞が親しい呼び方をするのでおどろいたが、彼は皆からそう呼ばれているらしい。
確かに、彼が苗字で呼ばれているところを私は聞いたことがなかった。





「あ、早見さん、ちょっといい?」

「あ……うん。舞ごめん、ちょっと行ってくる」

「いいよ〜。……ていうか、凛ってちょっとかっこよくない?」

「は!? か、」



舞が変なことを言うから驚いて勢いよく立ち上がった私。
周りから注目を集めて少し恥ずかしくなった。



「もう……何動揺してんの〜。行ってらっしゃい」

「あ……うん」



私は小さく呟いて清水君の元へ向かった。
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