成瀬課長はヒミツにしたい
「それは……」

 成瀬が何か話そうと声を出した時、ガチャリと音を響かせて入り口の扉が開いた。


「それは、僕から説明します」

 後ろから澄んだ声が聞こえ、真理子は入ってきた人物を見て目を丸くする。

「社長……?」

 社長はゆっくりと歩いてくると、真理子に笑顔を向けた。

 そしてそのまま、成瀬の肩にポンと手をかけながら通り過ぎると、常務の隣へ立つ。


「その写真に写っている子は、僕の一人娘です。皆さんには言っていなかったのですが、僕はシングルなんですよ。忙しい社長業と子育ての両立は難しく、成瀬課長と水木さんにサポートをお願いしていました。それがまさか、こんな誤解を生んでしまうとは。本当に申し訳ないと思っています」

 頭を深々と下げる社長の様子に、フロアにいる社員は外ならず、真理子も呆気に取られる。

 成瀬の顔を見上げると、成瀬も驚いた様子で社長の顔を見つめていた。
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