成瀬課長はヒミツにしたい
「専務。それは今ここで話す事ではないのでは?」

 成瀬の言葉に鋭い視線を向けると、専務はまたフロアを見回した。

「先代の意志を、本当の意味で継ぐのは誰か……と言いたいだけですよ。まぁ今回の件も、私はここにいる全員が、納得したとは思っていませんがね」

 専務はそう言うと、威圧的な顔で社長に目を向ける。


「まったく、子供も可哀そうなもんだ。母親もおらず、父親には育児を放棄され、社員が家政婦の真似事とは。まぁ、人様に迷惑をかけるのが得意な方の子ですからなぁ。期待しても、しょうがないですがね」

 専務の馬鹿笑いがフロア内に響き渡る。


「くっ」

 成瀬の小さい息遣いが聞こえるのと同時に、真理子は思わず専務の前に飛び出していた。

「専務! その言葉、訂正してください!」

 真理子は怒りでわなわなと震える拳を握りしめながら、思わず専務の前に立ちはだかった。
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