成瀬課長はヒミツにしたい
「何だ? 文句でもあるのか? 君だって被害者だろう?」

 専務はそう言うと、真理子の顔を覗き込む。

「私たち大人は、何と言われても構いません。でも……乃菜ちゃんの事を悪く言う事は、絶対に許さない」

 真理子はキッと、専務の目を見返した。


「なんだと?! お前、誰に向かって物を言っている!」

 専務のあまりの剣幕に、真理子は一瞬後ずさる。

 それでも拳をぐっと握り直し、また一歩前へ詰め寄った。


「真理子!」

 成瀬が小さく声を出し、真理子の肩を引き戻すように間に割って入った。

「柊馬さん、待ってください。これだけは言わせてください。許せない気持ちは、柊馬さんだって一緒でしょう?」

 真理子は成瀬の瞳を見つめながら、小さくささやく。

 成瀬はしばらく逡巡していたが、納得したようにうなずくと、口元をキュッと引き上げた。

「……そうだな。お前の言うとおりだ」

 成瀬は真理子の隣に立ち、専務の顔を鋭く振り返った。
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