成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子の力強い声は、フロア内に響き渡る。

 専務は真理子の勢いに気圧され、しばし呆然としていた。


「真理子ちゃん……」

 社長のつぶやくような声が聞こえた時、じっと事の成り行きを見ていた常務が、真理子と専務の間に割って入る。

「専務。少し口が過ぎるのでは?」

 その声に、専務ははっと我に返ると、顔を真っ赤にして肩を怒らせた。


「まったく、くだらん味方をつけたもんだ。だが、私は社長のやり方には、断固反対しますからな」

 専務は社長に向かって、そう吐き捨てると、足を鳴らしてフロアを後にした。


 バタンと扉の閉じる音が響く。

 その途端、真理子は急に力が抜けたように、へなへなと床に座り込んだ。

「おい。大丈夫か?」

 成瀬が慌てて、真理子の側に駆け寄り肩を支えた。

 すると真理子は、この世の終わりかと思うような顔で成瀬を見上げる。
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