成瀬課長はヒミツにしたい
「柊馬さん。どうしましょう……。私、やっちゃいました……」

 真理子は、最大限に口をへの字にしている。

「全く、お前は……」

 成瀬はホッとした顔をすると、眼鏡を外しながら肩を揺らして笑い出した。


「え?! 柊馬さん。ここ、社内ですよ!」

 真理子はぎょっとした顔をすると、慌てて成瀬の耳元に手を当てる。

「あぁ。そうだったな。本当に、お前といると調子が狂う……」

 成瀬は笑いながらそう言うと、真理子の頭をわしわしと力いっぱいに撫でた。

「だから、みんなが見てますって……。それに、私は子供じゃありませんってば」

 真理子は顔を真っ赤にしながら、身体をのけぞらせる。

「どうだか……」

 成瀬はいつになく優しい声を出した。


 すると拳を握りしめて、耐えるように立っていた社長が、すっと二人の元にしゃがみ込んだ。

「二人とも……ありがとう。乃菜を守ってくれて、本当にありがとう」

 社長は、成瀬と真理子の肩を抱き、何度も何度も揺すっている。
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