成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子は頬を赤く蒸気させながら、デスクに戻った。

「水木くん。格好よかったね」

 システム部長が、相変わらずぽよんとしたお腹を撫でながら、真理子に笑顔を送る。

 真理子は、えへへと照れ笑いをした後、自分のデスクの椅子に座った。


 ふと隣から視線を感じ振り返ると、卓也がじっと真理子を見つめている。


 ――前に、卓也くんに柊馬さんとのこと聞かれたとき、はぐらかしちゃったし。嘘ついちゃったようなもんだよね。


「卓也くん……。あのね……」

 真理子が声を出すのと同じタイミングで、後ろから甘ったるい声が聞こえてきた。

「水木さーん♡」

 真理子が振り返ると、数名の女性社員が笑顔を見せながら、こちらに向かってくる。


 ――柊馬さんの事、いつも噂している人たちだ……。


「はい……」

 若干身構えるように振り返った真理子は、それからしばらく女性社員たちに取り囲まれ、一躍社内の時の人となっていた。
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