成瀬課長はヒミツにしたい
「今日も、家政婦しに行くんですか……?」

 真理子がパソコンをシャットダウンしていると、隣から卓也の小さな声が聞こえてきた。

「う、うん……そのつもりだけど」

 真理子は遠慮がちに卓也を振り返る。

 卓也はパソコン画面から目を離さないまま、大きくため息をついた。


「今日、真理子さんが、つくづく恋愛音痴なんだって事がわかりました」

 あきれたような声を出す卓也に、真理子は少しむっとした顔をする。

「え? な、何よ。そんな事、自分でもわかってるけどさ……なんで急にそんな話するの?」

 卓也はあからさまに、鼻で笑った声を出す。

「ほんっと、真理子さんって鈍感すぎ」

「ちょっと! 何が言いたいのよ?」

「……じゃあ言いますけど」


 卓也は真理子の顔を、横から覗き込むように見上げる。

「色気出さないでくださいって、俺言いましたよね?」

「は? 私がいつ色気出したのよ! 何が言いたいのか、よくわかんないよ」

 真理子はつい声が大きくなり、慌てて周りを見回した。
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