成瀬課長はヒミツにしたい
「あれ? 興味ないんですか?」

「い、いや。そんな事はないけど」

「ふーん。そういや、成瀬課長が……」

「な、成瀬課長?!」

 真理子は、ガタッと音を立てて椅子から飛びあがる。

 卓也は真理子の様子に目を細めてから、再び首を傾げた。

「いや。何でもないよ……」

 真理子は冷静を装ってキーボードに手を伸ばす。


「ねえねえ! 成瀬課長がさぁ……」

 するとしばらくして、フロアの遠くから誰かの声が聞こえてきた。

 その声にキーボードをガチャリと鳴らす真理子の顔を、卓也がじっと見ている。


「あー、ちょっと……コーヒー入れて来ようっと……」

 真理子は卓也の視線から逃れるように、給湯室に駆け込んだ。

「ど、どうしよう。名前を聞いただけで、動揺が抑えられない……」

 真理子は給茶機にカップをセットすると、コーヒーのボタンを押した。
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