成瀬課長はヒミツにしたい
「お! 佐伯じゃない。これからみんなで飲みに行くけど、お前もどう?」

 軽い声に卓也はしかめっ面を向けると、顔の前で手を横に振る。

「今日はサーバーのバックアップで居残りなの。どうぞ、楽しんできて」

「なんだよ、可哀そうだなぁ」

 同期たちは軽く笑うと、興味津々な顔つきで休憩室に入って来た。


「そういや、お前のとこの地味子先輩、昼間すごかったな」

「そうそう。専務にあの剣幕で迫れるって、ある意味命知らずだよな」

 卓也は同期たちの馬鹿笑いを聞き、眉間に皺を寄せる。

 すると後ろにいた女性社員が二人、ひょっこりと顔をのぞかせた。


「佐伯くんは、地味子先輩が家政婦してるの、知ってたの?」

「いや……全く」

「ふーん。やっぱり秘密だったんだぁ。最初すごい驚いたけど、でも地味子先輩で良かったかも」

「なんで……?」

 女性社員は可愛らしく首を傾げながら、人差し指をぴんと立てると、卓也の顔を覗き込む。
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