成瀬課長はヒミツにしたい
「うわ……酷い顔」

 真理子は、ガラスに写った自分の顔を見てため息をつく。

 昨日は一晩中泣き明かした。

 涙と一緒に自分の成瀬への気持ちも、すべて流れて忘れてしまえばいい。

 そう願っていたが、瞼に浮かぶのは成瀬のほほ笑む顔だけだった。


 ――最初から、わかってたことじゃない。柊馬さんの態度は、ただ単に私が家政婦のパートナーになったからだって。


 真理子は買ったばかりの、冷たいペットボトルを自分の目元にあてる。

「おはようございます……」

 下を向きながらフロアを抜け、奥のシステム部のデスクへと向かった。


 ふと目に飛び込んできた卓也の姿に、真理子は一瞬「あれ?」と違和感を感じる。

 でも次の瞬間、昨日の出来事の気まずさを思い出し、そのまますっと隣に腰かけた。

「おはよう。昨日、居残りだったんでしょ?」

 真理子は正面を向いたまま、小さく声をかける。

 隣で卓也の肩がビクッと動くのが、目線の端に映った。
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