成瀬課長はヒミツにしたい
「乃菜はどうするんだ? あいつ、俺には『しばらく家政婦に来るな』って言ってたし」

 柊馬は椅子に深く腰かけると、ふてくされたような顔を見せた。

 あはは、という明彦の笑い声が、ミーティングルームに響く。


「柊馬はライバルだからね」

「ライバル?」

 怪訝な顔をする柊馬を見て、再び明彦の明るい笑い声が響いた。

「ほんっと、柊馬の鈍感力には感謝するよ……。乃菜の事は、秘書課にお願いするしかないかなぁ。前に協力してくれるって言ってたし」

「そんな事して、大丈夫なのか?」

 明るい笑顔を見せる明彦に、柊馬は大きくため息をつく。

「まあ、大丈夫でしょ。それにしても、せっかく一歩進めそうだったのになぁ。ここでお預けかぁ……」

 そう言いながら大きく伸びをする明彦の顔を、柊馬が不思議そうに見つめている。
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