成瀬課長はヒミツにしたい
「俺はそろそろ出なきゃいけないから、引き続き調査の方をお願いできるかな」

「はい」

 うなずく真理子に笑顔を見せると、社長は成瀬を振り返る。

「柊馬、些細なことでも、逐一報告してくれ。とにかく、時間が勝負だと思った方がいいね」

「そうだな」


 社長は上着を手に取ると、真理子の肩にそっと触れた。

「行ってくるね。また、連絡する」

 社長に耳元でささやかれ、真理子は真っ赤になった耳をばっと押さえる。

「は、はい……。いってらっしゃい」


 バタンと扉の閉じる音が響き、真理子は息をつきながら、隣に立つ成瀬の顔をそっと見上げた。

「しゃ、社長も距離感近いですよね……」

 成瀬は何も答えずに真理子を背を向けると、デスクの後ろの大きな窓の前に立った。


「お前……明彦に何か言われたか?」

 しばらくして、成瀬が小さく声を出す。

 真理子はドキッとして、成瀬の背中を振り返った。
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