成瀬課長はヒミツにしたい
「あの……家族ごっこしようって、言われました。そこから本物になればいい、なんて」

 真理子は、わざと明るい声を出しながら、成瀬の隣に立った。

「なーんか、告白なのかって、勘違いしちゃいますよね。社長が気軽にそんな事言ったらダメだって、柊馬さんからもきつく言っといてくださいよ」

 あははと笑いながら話す真理子を、成瀬が静かに見つめている。


「いいと思うよ」

 しばらくして成瀬がポツリとつぶやき、真理子は目を開いて振り返った。

「乃菜はお前の事、気に入ってるみたいだし……俺も安心して、家政婦を引退できるよ」

 成瀬は淡々とそう言うと、真理子から目を逸らす。


 真理子は成瀬の整った横顔を見つめながら、ぎゅっと両手を握りしめた。

「なんで、そんな事言うんですか? 乃菜ちゃんを守るのは、柊馬さんじゃないんですか?」

「え……?」
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