成瀬課長はヒミツにしたい

証拠探し

 社長はデスクの椅子に腰かけたまま、窓の外を眺めていた。

 真理子は成瀬の隣につくように、デスクの前に立つ。


「まさか、ここまで大きな騒動を起こすとはね……。相手は本気で、俺をつぶしに来てるってことか……」

 社長は独り言のようにつぶやくと、真理子たちを振り返った。

 普段は茶目っ気たっぷりな社長が、今は厳しい顔をしている。


「柊馬、真理子ちゃん。これ以上、いたずらに顧客を不安にはさせられない。三日後に会見を開くよ」

 社長の言葉に、成瀬が小さく息を吸う音が聞こえた。

「三日後?!」

 真理子も思わず声を出し、慌てて口元を覆う。


 ――そんなの……。専務の思う壺なんじゃ……。


 社長は真理子の心を読んだかのように、にっこりと笑うと、真理子と成瀬を交互に見た。


「もちろん。俺だって、ここで辞める訳にはいかない。でも騒動を長引かせることは、会社にとってダメージが大きすぎるんだ」

 社長は立ち上がると、静かに頭を下げた。
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