成瀬課長はヒミツにしたい
 明らかに真理子の知る、一般家庭とは異なる部屋の様子に唖然としていると、着替えをすませた昨日の女の子が、ツインテールの長い髪の毛を揺らしながら駆け行ってきた。

 女の子は真理子には目もくれず、ソファの前のローテーブルにスケッチブックと色鉛筆を置くと、何か夢中で絵を描きだす。


 ――5.6歳くらいかな?


 その時、目の前のキッチンで物音が聞こえだし、真理子は首を伸ばしてカウンターを覗き込んだ。

 ふいに飛び込んできた私服姿の成瀬に、自分でも驚くほどドキッとしてしまう。


 成瀬は、ラフなシャツとパンツスタイルでグラスにお茶を注ぐと、そのまま真理子の前に置き、自分も正面に腰かけた。

 成瀬の顔つきは、昼間の給湯室よりは幾分柔らかだが、やはり鋭い瞳は変わらない。

 それにしても、今までこんなに間近でじっくりと、成瀬の麗しい顔を見たことがあっただろうか。
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