成瀬課長はヒミツにしたい
「二人には、この三日間で、可能な限りの調査をお願いしたい。俺に力を貸して欲しい」

 頭を下げながらそう言う社長の姿に、真理子は胸が締め付けられそうになる。

 シーンと静まり返った室内に、空調の音だけが響いていた。


「もし調査の結果、何も見つけられなかったとしたら……?」

 しばらくして、成瀬が社長の瞳をじっと見つめながら声を出す。

「その時は……」

 社長はそう言いかけると、ふと壁にかかった額縁に目をやった。

 “全員野球“

 筆で書かれたそれは、きっと先代が書いたものだろう。

 額縁を見上げる社長の拳が、かすかに震えている。

 すると社長は、静かに成瀬に目線を戻した。


「その時は……柊馬。お前たちに、この会社を託す」

 固い決意をにじませた瞳で、社長は成瀬を見つめている。

 成瀬は何も言わず、静かにうなずいた。


 真理子は、両手をぎゅっと胸の前で握りしめたまま、そんな二人の様子を見守っていた。
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