成瀬課長はヒミツにしたい
 その後、真理子と成瀬は社長室にパソコンを持ち込み、調査のための準備を始めた。

 ここでログを確認している事など、他の社員、ましてや専務には知られてはならない。

 真理子は身を隠すように、社内を移動した。


 相変わらず社内は顧客や取引先からの問い合わせが後をたたず、混乱が続いている。

 社長から社員へ、何の説明もない状況に、少なからず不満は募りだし、それを専務が煽っている様子も見え隠れしていた。


 ふと真理子は、パソコンの配線を繋ぐ手を止めると、取引先への電話を終えて息をつく社長を見上げた。

「あの、乃菜ちゃんは大丈夫ですか?」

 真理子の心配そうな目線に気がつくと、社長は疲れた顔を隠すようにほほ笑む。

「とりあえず、しばらくは親戚の家に預かってもらうことにしたんだ。バタバタして、乃菜を不安にさせたくないしね」

 真理子の脳裏に、乃菜のにっこりとほほ笑む顔が思い浮かんだ。

「乃菜ちゃん、寂しがってるかも知れないですね」
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