成瀬課長はヒミツにしたい
 この作業は次の日も続いたが、それでも出てくるのは通常の業務か、社長案件の業務のファイル名のみだ。


 ――やっぱり、卓也くんじゃない?


 真理子が首を傾げていると、隣で成瀬のため息が聞こえた。


「何か見つかったか?」

「いえ。私の方は、それと言っておかしな所は……。柊馬さんの方は?」

 成瀬は両手と首を大きく横に振って、背もたれにドサッと身体を預ける。

「専務や橋本との接点は見られない。やはり思い過ごしか……? となると、他の線もあたる必要があるな」


 会見は明日に迫っている。

 社長は朝から、会見に向けた準備で外出していた。


 ――もう時間がないのに……。何の手がかりもつかめない。


 焦る真理子は、もう一度ログに目を通す。

 そして「あれ?」と首を傾げた。


 一日だけ、卓也が社長案件のデータファイルを、違うフォルダに保存している日があったのだ。
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