成瀬課長はヒミツにしたい

恋の条件

「あっつ……」

 じりじりと照り付ける日差しに目を細めながら、真理子はオフィスビルが立ち並ぶ通りを歩いていた。

 ショーウィンドウに映った自分の姿を確認して、セミロングの髪に手をあてる。


「毛先がはねてる。寝ぐせ、直す時間なかったもんな……」

 昨日、数カ月ぶりに友達に誘ってもらって参加した合コン。

 気合だけは十分だったが、結果は惨敗だった。


 なんとなく良い雰囲気になる周りを横目に、気がつけば真理子は鍋奉行ならぬ、サラダ奉行になっていた。

「途中、店員に間違えられるという、失態までしでかしちゃったし……」


 ここ数年、真理子は浮いた話からは完全に遠ざかっている。

 はぁと大きなため息をついていると、後ろから、あははと楽しそうに笑う声が聞こえてきた。
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