成瀬課長はヒミツにしたい
「何か残ってそうか?」

 成瀬は真理子の椅子に手をかけ、後ろから覗き込んでいた。

「共有のメールソフトには何も残ってませんね。WEBメールを使っていたら、探し出せません……」

「ダウンロードしたと思われるファイルは? どこかに保存されていないか?」

「探してみます……」


 真理子は慎重に確認しながら、パソコン内をクリックしていく。

 何度も確認するが、顧客リストと思われるファイルは、何も残っていなかった。


「ちなみに……」

 成瀬が中野を振り返る。

「橋本がその作業をしていた日は、いつか覚えていますか?」

「えっ……と……」

 中野は考え込むように眉間に皺を寄せると、壁に掛かるカレンダーを見上げた。


「あ……この日です」

 しばらくして中野が指さした日付に、真理子は息を止める。


 ――卓也くんが、非公開フォルダにファイルをUPした日と同じ……。
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