成瀬課長はヒミツにしたい
 田中さんの言葉に、真理子は頬を真っ赤にしてうつむく。

「ま、まぁそうですけど……」

 下を向いたまま答える真理子に、田中さんは満足そうに腰に手を当てながらうなずいた。

「ほら! やっぱり!」

「でも、でも……。つい最近、フラれたばかりなんです」

 真理子は、てへへと肩をすくめて苦笑いする。

「えぇ?! そうなの?! そうは見えないけどねぇ……」

 田中さんは大袈裟にのけ反って驚くと、しきりに首を傾げながら独り言のようにつぶやいた。


 真理子が不思議そうに見つめると、田中さんは真理子の顔をじっと覗き込む。

「はっきり言葉で言われたのかい?」

「え……?」

「フラれたって、あんたの勘違いなんじゃないかい?」

「そ、それは……」

 田中さんに前のめりに見上げられ、真理子はたじたじになってしまう。

 そんな様子に小さくため息をつくと、田中さんは腰をさすりながら身体を元に戻した。
< 217 / 413 >

この作品をシェア

pagetop