成瀬課長はヒミツにしたい
「常務の話によると、俺たちが本社を発った後から、姿が見えなくなったそうだ。佐伯と橋本の二人共、明日の会見が終わるまで姿を隠すように、専務が指示したのかも知れないな……」

 成瀬は深く息を吐くと、背もたれに頭を押し当てるように天井に目を向ける。

「そんな……やっと証拠をつかんで、あと一歩で追い詰められたのに」

 真理子は、膝の上の両手の拳を、ぎゅっと握り締める。

「相手の方が、一枚上手だった……ってことか」

 上を向いたまま静かに目を閉じる成瀬を、真理子はそっと見上げる。


「社長は……何と?」

「とりあえず明日の会見では『今わかっている、事実を説明する』とだけ言ってた」

「社長の責任は、すぐに追及されるんでしょうか?」

「今の状況で辞めても、逃げたと言われかねない。自分の責任は、この件が解決してから決めると言って、引き延ばせれば良いんだがな」

 成瀬は肘掛に肘をつくと、こめかみを軽く押さえる。
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