成瀬課長はヒミツにしたい
「佐伯の方は?」

 成瀬が顔を向け、真理子は小さく首を振った。

「そうか……」

 成瀬はそこまで言うと、はたと口を閉じる。

 そのまま、二人の間には長い沈黙が続いた。


 シートからは心地よい振動が伝わってくる。

 真理子はシートのヒーターの熱に、だんだんと眠気に襲われて、目が(うつ)ろになっていた。

 成瀬はくすっと笑うと、真理子の顔を覗き込む。


「真理子も疲れただろ? 起こしてやるから、しばらく寝てろ」

 成瀬はそう言うと、真理子の頭をぐっと背もたれに押しつける。

「でも、こんな大変な時に……」


 ――それに……もう少し、柊馬さんと二人の時間を、感じていたい……。


 真理子は夢と現実の狭間でそうつぶやくと、そのままコトンと寝てしまった。


 成瀬は、自分の肩に寄りかかって眠る真理子の髪をそっと撫でる。

「ここまで突き止められたのは、真理子がいたからだ。本当に、無理やりお前を家政婦にしてから、苦労をかけるな……」
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