成瀬課長はヒミツにしたい

会見の日

 次の日、真理子は朝から社長室に向かった。

 すでに室内には、社長と成瀬の他に常務の姿がある。

 ソファに座る成瀬の隣に、真理子も浅く腰掛けた。


 テーブルの上にはノートパソコンが置かれており、社長が会見する予定の会場の様子が、ビデオで映し出されていた。

 今日の会見の様子は、広報部がビデオ撮影し、リアルタイムで社内にWEB配信されることになってる。


「随分と席が多く用意されてますね……」

 真理子は、眉をひそめながら成瀬を見上げる。

 サワイライトのような中小企業の会見に、ここまで多くのマスコミが集まるものなのだろうか。

 会場にしても、ホテルの宴会場のようで、情報漏洩の謝罪会見とは到底思えない華やかさだった。


「どうも専務が、方々のマスコミに声をかけたらしいのだよ。会場手配に関しても、専務の指示だったようだね」

 ため息をつきながら、常務が横から声を出す。

「まるで野球選手の、引退会見だな……」

 成瀬が吐き捨てるように、小さくつぶやいた。
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