成瀬課長はヒミツにしたい
「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。この度は弊社の“顧客情報 漏洩疑い”の件で世間をお騒がせし、顧客の皆様を不安にさせたこと、心からお詫び申し上げます」

 社長は一旦、深々と頭を下げる。

 会場内はしーんと静まり返り、カメラのシャッター音だけが響いていた。

 広報部が撮影するビデオカメラの奥では、サワイライトの社員たちも、固唾(かたず)をのんで見守っている事だろう。


「この度の騒ぎの報告を受け、弊社で十分に調査を致しました結果……」

 社長は静かに目を閉じた。

 そして短く息を吸うと、力強く目を開く。


「その結果“顧客情報漏洩の事実はない”ことが、判明いたしました」

 社長の言葉に、会場内は一瞬静けさに包まれたのち、一気にざわつき出す。


「一体……どういう事だ……?!」

 会場の一番後ろで聞いていた専務は、驚愕した様子で目を見開いた。
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