成瀬課長はヒミツにしたい
 卓也は、膝にこすりつけるように頭を下げる。

「それが……事実……?」

 真理子は茫然としながら、思わず両手を口元に当てた。


「すぐに、社長に連絡を入れる……」

 成瀬はポケットからスマートフォンを取り出すと、慌てて画面をタップする。

 呼び出し音を鳴らし続けるが、一向に社長にはつながらない。

 成瀬は顔を上げると、まっすぐに腕を伸ばし扉を指さした。


「真理子! 今すぐ……会見会場に走れ!」

「は……はいっ」

 成瀬の声に、真理子は社長室を飛び出して行った。


 真理子が駆けだして行った社長室は、急に静けさが戻る。

 成瀬はソファの背に、背中をあずけると小さくため息をついた。

「何で、こんなことを?」

 成瀬は静かに卓也を見つめる。

 卓也は自分をあざけるかのように小さく笑った。


「俺、真理子さんの事が好きだったんですよ」

 卓也の言葉に、成瀬の瞳が丸く開いた。
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