成瀬課長はヒミツにしたい
「おいおい。乃菜、パパが手伝おうか?」

「だいじょうぶだもん!」

 奥から会話が聞こえたかと思ったら、乃菜と同じく満面の笑みの社長が、ひょっこりと顔を覗かせた。


「真理子ちゃん。いらっしゃい」

 社長はすでにワインを開けているのか、頬がほんのりピンク色だ。

「ちょ、ちょっと、社長!!」

 真理子は靴を脱ぎ捨てると、慌てて社長の元に駆け寄った。


「今からそんなに出来上がっちゃって、予定のアレ! 大丈夫なんですか?!」

 小声でたしなめる真理子に、社長はエッヘンと腰に手を当てる。

「真理子ちゃん。俺が、何年父親やってると思ってるの? ダイジョウブ、ダイジョウブ」

「ほんとかなぁ……」

 真理子がため息をついていると、奥からパタパタと足音が聞こえた。


「よく言うよ。俺が何年サンタやってると思ってんだ」

 そう言いながら顔を覗かせたのは、いつものカーキ色のエプロン姿の成瀬だった。
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