成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子は慌てて「シーッ」と口元に人差し指をあてる。

「柊馬さんも、声が大きいですよ。乃菜ちゃんに聞こえちゃうでしょ?! 全く、二人とも自覚が足りないんだから!」

 ぷんぷんしながらキッチンに向かう真理子に、成瀬と社長は顔を見合わせて肩をすくめる。


 専務と橋本の一件が落ち着き、真理子達にも日常が戻って来ていた。

 しばらく家政婦業から離れていた成瀬も、最近はまた第一家政婦として戻ってきている。

「乃菜のお許しがでたからな……」

 目を逸らすようにそう言った成瀬に、真理子はどこか引っかかるものがあったが、成瀬と一緒に家政婦に入れることが何より嬉しかった。


 そして今日はクリスマスイブ。

 真理子たち三人は、乃菜のためにサプライズプレゼントを考えていたのだ。


「わぁ! 柊馬さん、ローストチキンですか?!」

 真理子はオーブンの中から漂う香りにつられ、ふらふらと顔を近づける。
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