成瀬課長はヒミツにしたい

職権乱用?

「うぅ……。頭痛い……」

 真理子はこめかみに手を当てながら、じりじりと照り返すアスファルトを、のろのろと会社に向かって歩いていた。


 秘密を知ってしまった真理子は、成瀬の策略にはまり、まんまと家政婦の契約を結んでしまった。

『俺の事は、第一家政婦だと思ってくれ』

 にんまりとしながらそう言った、成瀬の顔を思い出す。


「第一家政婦って……秘書じゃあるまいし。ばっかじゃないの!」

 そう悪態をつきつつも、会社で見せる顔とは180度違う成瀬の姿に、心の底でときめいていたのは事実。


「くぅー。イケメンってずるい。ズルすぎる……。私のバカバカバカ」

 真理子は思わず自分の頭をぽかぽかと叩く。

「にしても、性格変わりすぎでしょ……」


 会社で見せる成瀬の姿は、紳士的で近寄りがたい“クール王子”。

 一方、“《《家政夫の成瀬さん》》”の姿は、どう考えても……強引で、自信家で、俺様……?!

「うーむ。同一人物だとは思えない……。でも、何で家政婦なんてしてるんだろう?」


 あの部屋にいた女の子は、名前を“乃菜(のな)”と言い、父親との二人暮らしだそうだ。
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