成瀬課長はヒミツにしたい
「そうそう。今年はクリスマスに、花火が上がるって書いてあったよ。冬に花火なんて珍しいよね」

 社長が真理子の隣に立つ。

 目の前には、まるで窓のスクリーンいっぱいに広がるかのような、花火がキラキラと輝いていた。

「すごいすごい! はなびだぁ」

 乃菜は大興奮で、ぴょんぴょんと跳ね回っている。

 真理子も思わず花火に惹きつけられるように、窓際に近づいた。


「あんな風に、人の心を惹きつける輝きを、イルミネーションで作りたいんだよね」

 さっきまでほろ酔いだった社長が、急にいきいきと声を弾ませる。

 真理子は社長の顔を見上げた。

 その瞳は、まるで少年のようにキラキラと輝いている。

「素敵ですね」

 真理子は花火に目を戻すと小さくつぶやく。


 乃菜は、二人の顔をじっと見比べると、間に入って手をつないだ。

 そんな三人の後姿を、成瀬はそっとキッチンから見つめていた。
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