成瀬課長はヒミツにしたい

変わっていく関係

 年も明けた頃、社長室には人事部長と成瀬の姿があった。

「え? 水木さんを、ですか?」

 人事部長は軽く眉を上げると、驚いた声を出す。

「はい。彼女なら十分、適性はあると思います」

 社長の通る声に、人事部長は一旦成瀬にチラッと目をやった。

 成瀬は感情の読み取れない顔で、まっすぐ社長を見ている。


「わかりました。その方向で動きます。各部署の調整は……成瀬くん、お願いできるかな」

 人事部長は社長に軽く息を吐きながらそう言うと、成瀬を振り返った。

 成瀬は小さくうなずき、二人はそのまま社長室を後にする。

 エレベーターへ続く廊下を歩きながら、部長はため息をついた。


「あの一件以降、社長のリーダーシップで社内はまとまったように見えるが、まだまだ諸刃の剣。独断で進めて、また不満が募らないと良いんだがね……」

 独り言のようにそうつぶやくと、部長は人事部の扉を押し開けた。

 成瀬は自席に戻ると、パソコンの画面を見つめながら、昨日の会話を思い出す。
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