成瀬課長はヒミツにしたい
 プログラム画面をじっと見つめていた真理子は、一旦大きく伸びをした。

「そう言えば前に卓也くんが、誕生日にブルーライトカットのメガネを、買ってくれるって言ってたっけ……」

 真理子は思い出し笑いをすると、そっと誰も座っていない、隣のデスクに目をやる。

 いつの間にか、卓也が座っていないことにも慣れてしまった自分に、小さくため息をついた。


「誕生日かぁ」

 真理子は、デスクに置いている卓上カレンダーを手に取り数枚めくる。

 そして自分の誕生日を見つけると、指でそっとなぞった。

 しばらく恋愛から遠ざかっていた真理子は、ここ数年、誕生日といえども日常と変わらず一人で過ごしてきた。

 でも、今年は……。


「一緒にすごしたいなぁ……」

 真理子はペンを取ると、誕生日の日付の所に、あのハートのステッキの絵を描いた。

「夢が叶いますように……」

 そうつぶやいた真理子は、突然背後に人影を感じて、慌てて振り返る。
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