成瀬課長はヒミツにしたい
「ま、待ってください。社長の秘書なんて……。そんな事、急に言われても、頭がついていきません」

 うつむく真理子に、成瀬が優しい目を向ける。

「お前ならできるよ。それは人事部として、俺も納得している」

 成瀬の声に、真理子はそっと顔を上げた。


「でも、あまりに業務内容が違いすぎて……。それにシステム部は、部長一人になってしまいます」

 真理子は戸惑いを隠せないまま、胸の前で手を握った。

「システム部の事は心配しなくていい。部長も納得の上だ」

「そんな……」

「今後は秘書と家政婦として、明彦と乃菜の事を一番近くで、支えてやってくれないか? これは、真理子にしかできないことなんだ」

 成瀬はそう言うと、真理子の肩にそっと手を置いた。


 真理子はその手の平から伝わる熱を感じながら、上目づかいで成瀬を見つめる。

「それは……柊馬さんも一緒に、ってことですよね……?」

 たどたどしく声を出す真理子に、成瀬の手がピクリと動いた。
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