成瀬課長はヒミツにしたい
 ――今は社長と乃菜ちゃんの存在が、すごくありがたい。でも……その気持ちに甘えて、本当にいいの……?


 自分の本心を隠したまま、二人と接することに罪悪感さえ感じることもあった。

 真理子は写真たてから目を離すと、小さくため息をつく。


 すると勢いよく扉が開き、小宮山が出勤してきた。

「おはよう。早いね」

 急いで来たのか、小宮山は息を弾ませている。

「おはようございます。朝一で秘書課に資料を取りに行っておこうと思って」

 真理子の声に相槌を打つと、小宮山は遠慮がちに真理子を見つめる。


「何か言われなかった? 大丈夫?」

 真理子は一瞬ためらったのち、あははと頭をかく。

「まぁ、何か言ってた気はしますけど」

 明るく答える真理子に、小宮山はほっとした顔を見せる。

 小宮山は社長よりも少し年上で、先代の頃から社長秘書をしているベテランだ。
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