成瀬課長はヒミツにしたい
「水木さんのそういうとこ、良いよね。社長が気に入るのも納得できるよ」

 小宮山は上着を脱ぐと腕まくりをし、真理子と一緒にデスクを拭き掃除しだした。

「正直、もう一人社長秘書が欲しいって、ずっと思ってたんだよねぇ。でも、社長が全然オッケーしてくれなくってさぁ。それもあって、秘書課の子たちが水木さんに嫉妬してるんだと思う」

 小宮山は大きくため息をつく。

「社長は今まで、なんでオッケーしなかったんですか?」

「さぁ? なんでだろ?」

 小宮山は肩をすくめながら、おどけたように何度も首を振る。


「まぁでも、こうやってさ。掃除ですら自分の心を許した人にしか、させない訳でしょ?」

 真理子が首を傾げると、小宮山はデスクを拭く手を止め、急に真面目な顔を向けた。


「孤独だからね。社長ってのは……。信じられる人を、探してたのかもね」

 小宮山の言葉に、真理子は胸の奥がチクリと痛むのを感じていた。
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