成瀬課長はヒミツにしたい
 社長は、少年のように目を輝かせている。

 その顔を見るだけで、真理子までわくわくしてくるようだった。


「じゃあ、絶対にうまくいくように、応援してます」

 真理子は笑顔で、ガッツポーズを返す。

「はい! しかと受け取りました!」

 まるで敬礼するように、おどけて答える社長に、真理子はぷっと吹き出した。


「では私は先に、車の準備を……」

 しばらくして小宮山は、先に社長室を出ていく。

 バタンと扉が閉まる音が響き、社長が真理子を振り返った。


「そうそう。今日は、家政婦には入らなくて大丈夫だからね」

「え? あ、はい……」

 首を傾げる真理子に、社長が白いレース模様がかたどられた封筒を、そっと差し出す。

「そのかわりに、真理子ちゃんを、こちらにご招待します」

 真理子は目を丸くすると、封筒の表面を覗き込む。

 そこには乃菜の手書きの文字で“しょうたいじょう”と書かれていた。

「今夜7時に。待ってるからね」

 社長は真理子の耳元でそうささやくと、静かに社長室を後にした。
< 272 / 413 >

この作品をシェア

pagetop