成瀬課長はヒミツにしたい
「ところで……。あれから、あの子とはうまくいってるかい?」

 成瀬が驚いたように目を丸くすると、田中さんは顔をニヤニヤさせる。

「またまたぁ。とぼけちゃって」

 田中さんは楽しそうに笑いながら、成瀬の腕を肘で軽くつついた。


 成瀬は小さくため息をつくと、田中さんに向き直る。

「彼女とは、何でもないですから」

 眼鏡のブリッジを軽く押さえ淡々と言う成瀬に、田中さんは大袈裟に驚いたふりをした。

「ありゃりゃ。そうなの? 残念だわ。せっかく魔法のステッキをあげたのにねぇ」

「魔法の……ステッキ?」

「そう。夢が叶う魔法のステッキ。ほら、これだよ」

 田中さんはそう言うと、検品済みのステッキを成瀬に手渡した。


 成瀬はステッキを手に取ると、手元のスイッチをぐっと押す。

 すると先端のハート型が、キラキラと色とりどりに光り出した。
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