成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子がマンションのインターホンを押すと、満面の笑みの乃菜と社長に出迎えられた。

 乃菜は「せーの!」と合図を送る。

 パンと音が鳴ってクラッカーが弾けた。


「まりこちゃん! おたんじょうび、おめでとうー」

 大きな声と共に抱きつく乃菜に、真理子は目をまんまるにさせる。

「え……。どうして、知ってるんですか?」

 社長は笑顔のまま、驚いた表情の真理子の手を取ると、ゆっくりと中へ案内した。


 リビングに入った途端、真理子は口元を両手で覆う。

 “ハッピーバースデー まりこちゃん”

 大きく書かれた文字とともに、部屋は風船や折り紙のガーランドであふれている。

 そしてその飾りを彩るように、天井にはイルミネーションライトが波上に取り付けられ、キラキラと輝いていた。


「……すごい」

 真理子は言葉を失ってその場に立ち尽くす。

「乃菜がね、どうしても手作りのお祝いをしたいって言って。朝から二人で準備したんだよ」

 社長は乃菜と顔を見合わせると、にっこりとほほ笑んだ。
< 278 / 413 >

この作品をシェア

pagetop